教育方法学研究
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カナダ・オンタリオ州におけるメディア・リテラシーの教師教育
上杉 嘉見
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2003 年 28 巻 p. 187-197

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抄録

本研究は,カナダ・オンタリオ州におけるメディア・リテラシー教育の概念と実践の普及過程を,その教師教育の側面に注目して検討するものである。オンタリオでは,1987年にメディア・リテラシー教育が第7学年から第12学年の英語科に必修領域として導入された。そのために現職教育が要請され,専門資格認定コースやワークショップが開催されてきた。講師を務めるのは,メディア・リテラシー協会(AML)に所属する経験のあるコンサルタントや教師である。専門資格認定コースでは,受講者はメディア・リテラシー教育のリーダーとなることが期待され,専門性の高い内容が教えられる。一方,ワークショップでは教室実践に直接役立つような内容構成となっている。ところが,英語科教育課程におけるメディア・リテラシーの周辺的性格から,推進の試みは困難に直面している。英語科の教員養成課程の中で,メディア・リテラシー教育にはごくわずかの時間しか充てられていない。また,生徒や教師の間でメディアのコースは,文学などと比して安易と見なされている。ここに,いわゆる高級文化と低級文化という区別が今もカリキュラムや人々の意識に存在していることがうかがえる。推進者の間では,普及のための方策として,他の教科目にメディア・リテラシーを組み込んで扱うことが議論されている。しかしながら,過密なカリキュラムの中で,このアイデアを実現するには限界があるかもしれない。

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© 2003 日本教育方法学会
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