日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: S1
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水生動物の真菌病原因菌に関する研究
*畑井 喜司雄
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抄録

水生動物(特に魚介類)の真菌病を専門に研究する研究者は,私が昭和50年にこの研究に着手するまで日本には存在しなかった.特に,下等菌類に起因する魚介類の病気に関しては,どのような手法で菌の分離・培養・同定・保存および病原性の確認を行えばよいのかが分からず,過去の文献を読むことから着手し,その結果,昭和51年に「魚病研究」に総説「魚類寄生ミズカビ」を掲載することができ,それから手探りで魚介類の真菌病の研究を開始したのが始まりである.水生動物の真菌病は,一旦発生すると有効な治療法がないために,甚大な被害を被ることが少なくない.従って,その防除法が重要な目標となるが,その前に次から次に見つかる真菌病の原因菌を特定することに最初は忙殺された.魚介類の真菌病は,鞭毛菌類の卵菌類に分類される菌であることが多く,海生生物の病原菌は,卵菌類のクサリフクロカビ目の菌類,また淡水生物の病原菌は,同じ卵菌類のミズカビ目の菌類であることをまず明らかにした(なお,現在,卵菌類は菌類から,除外されてストラメノパイル生物に位置付けられている).しかし,魚病学の分野では依然として卵菌類に起因する病気を真菌病として取り扱っている.これは病気を解説する際に安易であることにも因っている.すなわち,クサリフクロカビ目の菌は全実性の組織内寄生菌で,後者は分実性の体外寄生菌である.これらの症例を記載した論文中で,何種類かの菌を新種として報告した.また,多くの経験を積むことで,上述の菌の分離培養法・同定法・感染試験法(網もみ法)・薬剤感受性試験法の手法もほぼ確立した.

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© 2009 日本菌学会
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