抄録
白紋羽病菌 (Rosellinia necatrix) は,果樹類および農作物に土壌伝染性病害を引き起こし,農薬等による防除が非常に困難な植物病原菌である. また,近年においては,環境や農産物の安全性が重要視されることから,永続的かつ環境負荷低減型の防除法として,菌類ウィルスに由来する病原性低下因子(dsRNA)を利用した生物防除法の開発が進められている. これまで,パーティクルガン法など物理的なdsRNAの導入法が検討されてきたが,いずれも形質転換効率は低い. そこで,効率的なdsRNA導入法を開発するため,本研究では,アグロバクテリウムを介した白紋羽病菌の形質転換系について検討した.
まず,子嚢菌形質転換用ベクターを構築するため,pAN26からハイグロマイシン耐性遺伝子カセットをBamHIおよびXbaIにより切断し,これをバイナリーベクターpBI121のT-DNA領域内部に組込み,プラスミドベクターpAN26-BI121を作製した. 次いで,Triparental mating法により構築したベクターをAgrobacterium tumefaciens LBA4404株へ伝達させた. さらに,A. tumefaciens LBA4404 (pAN26-BI121)と白紋羽病菌を接触させた結果,R. necatrix W1015株において,ハイグロマイシンを含むPDA上に複数の菌糸の生育が観察された. このことから,A. tumefaciens LBA4404とpAN26-BI121との組合せが,R. necatrix W1015株の形質転換系に使用できる可能性が示唆された. 現在,ハイグロマイシン耐性コロニーからDNAを抽出し,ハイグロマイシン耐性遺伝子をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析を実施中である.