日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: C32
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カシノナガキクイムシの坑道におけるRaffaelea quercivoraのジェネット分布
*高橋 由紀子松下 範久寳月 岱造
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抄録
 ブナ科樹木萎凋病の病原菌であるRaffaelea quercivoraは, 媒介昆虫のカシノナガキクイムシによって宿主樹体内に持ち込まれる. その後, R. quercivoraは坑道内で繁殖し, 羽化・脱出する媒介昆虫によって次の宿主へと伝搬される. 本研究では, R. quercivoraのマイクロサテライト(SSR)マーカーを作製してカシノナガキクイムシの坑道におけるジェネット分布を調査し, 坑道内における本菌の遺伝的多様性を明らかにすることを目的とした.
 枯死木1本中のカシノナガキクイムシの坑道9本について, 坑道周辺の材片を0.5~1cm間隔で採集し, 組織分離により2~7菌株のR. quercivoraを得た. 1本の坑道から4菌株以上のR. quercivoraが分離された6坑道について, 作製した4遺伝子座のSSRマーカーを用いて, 分離菌株の遺伝子型を同定した. Null対立遺伝子を1対立遺伝子とした場合, 供試した27菌株中26菌株が17のジェネットに分けられた. 残りの1菌株では, 2遺伝子座で2個の対立遺伝子が検出されたため, 遺伝子型を同定できなかった. いずれの坑道からも, 3~5個の異なる遺伝子型の菌株が分離された. また, 隣接する場所から分離された菌株を除き, 同一の坑道内で同じ遺伝子型の菌株が分離されることはなかった. したがって, 1本の坑道内には複数ジェネットのR. quercivoraが, パッチ状に生息していると考えられる. カシノナガキクイムシは一夫一妻制で, 雌成虫のみが本菌を伝搬すること, 異なるペアの坑道は互いに独立していることから, 1本の坑道内には1匹の雌が持ち込んだ菌が定着すると推測される. これらのことと, 本研究の結果から, カシノナガキクイムシが遺伝的に異なる複数のR. quercivora菌株を保持・伝搬していることが示唆される.
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© 2009 日本菌学会
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