日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: A23
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ベニバナイチヤクソウの生長段階ごとの共生菌の種の変化
*島本 繭橋本 靖
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抄録
林床性の草本植物であるベニバナイチヤクソウはその種子に胚乳を持たないため, 自力で発芽することが出来ない. 近年, これらの種子がロウタケ科の一種の菌に寄生して発芽する例が観察されている. その一方, 成熟した森林で大きなコロニーを形成しているベニバナイチヤクソウは, 樹木と共生する多様な外生菌根菌と非特異的に共生し, その中に発芽の際の特異的な菌は見られていない. このような共生菌の変化が, 発芽から成熟するまでの生長過程でどのように起こるのかは明らかではない. そこで本研究では, ベニバナイチヤクソウの発芽時に特異的に関わる菌が, 比較的若い段階の成体において継続して定着しているかを明らかにすることを目的とした. 実験として, 2ヶ所のシラカンバ若齢林において本種の種子約8万粒を埋設し, 発芽時の共生菌の種を再確認した. また, 種子を埋設した場所の近くで, 発芽から間もない本種個体の菌根菌と, その周辺のシラカンバの若齢木の外生菌根菌の種構成をrDNAのPCR-RFLP法とシークエンスによって調べ, 発芽時の特異的共生菌が菌根を形成しているかの確認を行った. その結果, 埋設した80437粒の種子のうち約4%にあたる3518粒が発芽していた. DNAの抽出を行った菌は埋設林によらず, 全てロウタケ科の1種であるSebacina vermiferaに最も高い相同性を示した. 一方, ベニバナイチヤクソウ及びシラカンバの外生菌根サンプルからは, 多様なタイプの菌が出現した. ベニバナイチヤクソウの菌根55サンプルのうち, 約9%が発芽時の共生菌と同じS. vermiferaと思われる菌によるものだったが, シラカンバ外生菌根からはこの菌は見つからなかった. 以上より, ベニバナイチヤクソウは, 発芽後しばらくの間, 発芽時に特異的に依存していた菌を保持したままであるが, 森林が成熟しコロニーが拡大するにつれ, 徐々に周囲の外生菌根菌に共生相手を乗り換えて生活していると考えられた.
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© 2009 日本菌学会
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