抄録
1998年9月、2002年10月、伊豆諸島三宅島の火山噴出物堆積地に生育するオオバヤシャブシの地下からAlpova属と思われる地下生菌を採取した。また、三宅島2000年噴火によってオオバヤシャブシが枯死した地点から土壌を採取し、そこでオオバヤシャブシ実生を育てたところ、地下部にAlpova属と思われる子実体が形成されていた(Yamanaka and Okabe 2006)。これら子実体から分離した菌株を、フランキア菌株を接種して根粒を形成させるか、菌を接種しないが窒素施与して育てた、オオバヤシャブシ苗にそれぞれ接種した。その結果、いずれも外生菌根を形成し、それらはこれまで海外において、Alpova diplophloeusの接種によってハンノキ属実生苗に形成された外生菌根とよく似た特徴を有していた。これら菌の窒素栄養源の利用能を調べたところ、アンモニア態窒素およびグルタミン酸をよく利用していた。また、nucLSU領域を使用し、これら分離菌の分子系統解析を行ったところ、本菌はハンノキ属樹木の菌根菌として海外で報告されているA. diplophloeusやA. austroalnicolaと同一クレードを形成し、近縁であることが示された。その一方で、本菌はA. diplophloeusやA. austroalnicolaとは大きく異なるnucLSU塩基配列を有しており、異なる種である可能性が示唆された。