抄録
Oudemansiella属は担子菌門,ハラタケ目に所属する木材腐朽菌であり,広葉樹の倒木や枯枝上に子実体を形成する.本属は日本では4種(O. brunneomarginata,O. canarii,O. mucida,O. venosolamellata)が報告されている.これらは主に肉眼的および顕微鏡的形質,生態的性質により種の分類が行われてきたが,交配試験等の遺伝学的性質および分子系統学的解析を行って検討した報告は少ない.したがって,日本産Oudemansiella属菌の種多様性を明らかにすることを目的として,肉眼および顕微鏡的形質に基づいた分類手法に加えて交配試験および分子系統学的解析を行っている.
ネッタイヌメリタケOudemansiella canarii (Jungh.) Höhn.は,亜熱帯から熱帯地域に分布し,各種広葉樹腐朽材上に発生する白色腐朽菌である.子実体はモリノカレバタケ型.傘表面は淡黄白色から淡灰褐色あるいは白色を呈し,強い粘性および明瞭な皮膜の破片を付着し,ひだは白色で幅広く,柄につばを欠くことなどの特徴を有している.本邦では,小笠原諸島,南西諸島などから報告されている.しかしながら,日本産Oudemansiella属の分子系統学的な検討により,日本産ネッタイヌメリタケは外国産のそれとは遺伝的に近縁ではあるが,異なる枝に配置されるとともに,本邦産の菌株はニュージーランドで報告されたOudemansiella australis G. Stev. & G.M. Taylorときわめて近縁な関係にあることが示唆された.O. australisは、ネッタイヌメリタケと比較して、傘表面の皮膜の破片を欠く.しかし、つばは無く,担子胞子の形態や大きさなどは類似する.本邦亜熱帯域には,新たにO. australisの分布が推測された.また,両者が採集にあたって混同されている可能性も否定できない.今後は本邦においてネッタイヌメリタケと同定されている標本について,顕微鏡的形質を検討し,分離菌株を用いた交配試験および分子系統学的解析を試みることによって,両種の本邦における地理的分布と類縁関係を明らかにしたい.