日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: B7
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日本産Phanerochaete属およびその類縁属の分類群の再検討
*伊藤 大志須原 弘登前川 二太郎
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抄録

Phanerochaete属は, 担子菌門サルノコシカケ目に属する木材腐朽菌で, 日本からは20種が報告されている. 近年の分子系統学的研究で, Phanerochaete属は単系統のグループとしての支持は難しく, 形態学的に似た異種をグループ化した属であることが示唆されている. 本研究では, 日本産Phanerochaete属およびその類縁属の標本と分離菌株を用いて形態学的及び分子系統学的解析を行い, Phanerochaete属の分類群の再検討を行うことを目的とした.
ITS領域を用いた系統解析の結果, Phanerochaete属およびその類縁属は、タイプ種であるPhanerochaete velutinaを含み主にPhanerochaete属種からなるクレードA, タイプ種であるPhlebia radiataを含むPhlebia属のみで構成されるクレードB, これ以外のPhanerochaete属種と多くの近縁属を含む多系統なクレードCから構成されることが示唆された. このうちクレードAには, 狭義Phanerochaete属と, それに近縁なRhizochaete属クレード, Hjorstamia属クレードが含まれており、このクレードがPhanerochaeteコアクレードであることが示唆された. 以上のことから, Phanerochaete属はこれまでの研究と同様に, 狭義Phanerochaete属とそれ以外の多系統な種の集合であることが示された. また, 今回初めてPhanerochaeteコアクレードのサブクレードとしてHjorstamia属クレードが示され, このHjorstamia属クレード内に, 日本新産種のHjorstamia amethystea (Hjortstam & Ryvarden) Boidin & Gillesを見出した.

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© 2009 日本菌学会
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