日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: B9
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アカキクラゲ綱における新目“Unilacrymales”の設立とCerinomycetaceae科の再定義
*白水 貴廣瀬 大徳増 征二
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抄録

 アカキクラゲ綱は二又分岐する担子器に特徴づけられる、担子菌門ハラタケ亜門に属する“異担子菌類”の一群である。本綱はDacrymycetaceae科とCerinomycetaceae科の2科から構成されるDacrymycetales目1目のみからなり、現時点で9属109種を有する比較的小規模なグループである。本綱菌はすべて針・広葉樹材を分解する褐色腐朽菌で、木材腐朽菌類の進化を考える上で重要な系統群であると考えられる。演者らは木材腐朽菌類の進化過程を解明することを目的とし、本綱の分類・生態・進化学的研究を進めている。ここでは、その一環として取り組んできた分子系統解析により本綱の高次分類に見直しを迫る結果が得られたので報告する。
 本邦産アカキクラゲ類6属28種と外国産株から得た18S rDNAおよび28S rDNA D1/D2領域の塩基配列を用いて分子系統樹を構築した。結果、アカキクラゲ類としては例外的な分岐しない担子器を持つDacrymyces unisporusがアカキクラゲ綱クレードの最も外側に配置された。このD. unisporusと他のアカキクラゲ類の間には、担子菌類の高次分類で重視される“担子器の形態”に著しい差があることが認められた。これらに基づき、演者らは、新目“Unilacrymales”とこれに属する新科・新属を設立し、ここに本種を転属することを提案する。またこの系統樹では、クッション状子実体を有し、Dacrymycetaceae科の1種として認識されてきたDacrymyces punctiformisがCerinomycetaceaeクレードに含まれた。この解析結果は、“背着性の子実体を有する”ことで特徴づけられてきたCerinomycetaceae科の定義が不十分であることを示唆している。この問題を解決する上で、演者らは、従来重視されてきた“子実体の外部形態”に加え、さらに複数の形態形質、すなわち“クランプコネクションの有無”、“担子胞子の隔壁数”および“発芽様式”を有用な分類形質として採用し、これらの組み合わせによりCerinomycetaceae科を再定義することを提案する。     *本研究の一部は財団法人発酵研究所の助成を受けて行った。

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© 2009 日本菌学会
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