日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: C22
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菌根性と腐生性キノコ(担子菌類)の比較生物地理
*保坂 健太郎
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抄録
 動物や植物に比べ、菌類には複数の大陸をまたいで分布する広域分布種がほとんどであると信じられていた。これは菌類が微生物であり、微小な胞子により生殖し分布を拡大するため、大陸間などの遠距離分散が容易に起こると考えられていたからである。
 近年の分子系統学的手法を用いた研究により、この仮説が必ずしも正しくないことが明らかになってきた。演者は担子菌門スッポンタケ亜綱ヒステランギウム目の系統地理を研究し、同目が明確な系統地理パターンを示すことを明らかにした。この結果に従うと、同目は南半球起源であり、南半球から北半球への遠距離分散は1回または2回のみで説明できる。これは同目が大陸ごとに固有種を有すること、および遠距離分散・定着は可能であるが、長い進化の歴史の中では比較的低頻度でしか起こらなかったことを示唆している。
 ただし同目は地下生の子実体を形成するため、胞子分散は風ではなく小動物(小型哺乳類および有袋類)による。さらには菌根性であり、共生関係にある宿主樹木との間にはある程度の特異性が見られる。そのため同目の分散・定着は特定宿主の存在に依存していると考えられる。つまり胞子分散媒体(小動物)と宿主樹木という2つの系統的に全く異なる生物の存在が、同目の分散・定着の制限となっている可能性がある。
 ヒメツチグリ目はヒステランギウム目とともにスッポンタケ亜綱に属する近縁分類群である。しかし前者は地上生の子実体を形成すること、胞子は風により分散されることに加え、腐生性であることから、ヒステランギウム目に比べて分散・定着に対する制限が少ないのではないかと考えられる。すなわち、ヒメツチグリ目はヒステランギウム目に見られたような、明確な系統地理パターンを示さないのではないかと予想される。今回の発表では、このような仮説に基づいて現在進行中の、ヒメツチグリ目の生物地理解析結果を、他の菌根性のものと比較検討する。
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© 2009 日本菌学会
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