抄録
シロアメタケ(Aurantiporus fissilis)は広葉樹に発生する木材腐朽菌であるが,街路樹や園芸樹である,クリ,ブナ,リンゴの生木に発生することが報告され,樹病害菌とみなされている.本種の国内での報告例は希であり,生理・生態について不明な点が多い.そこで本種の栄養特性・培養特性および木材腐朽力について調べた.
演者らは,2006年に兵庫県でアベマキ生木に発生した子実体を採集し,形態学的特徴からシロアメタケと同定した.DNA解析を行ったが,BLASTデータベースには相同性の高い担子菌は登録されていなかった。子実体組織から分離した菌株 (TI-657)を用いて,菌糸体生長温度試験,木粉培地における菌糸体の生長速度の測定,木材腐朽試験を行った.PDA培地における菌糸体の生長温度は10℃~40℃,至適生長温度は35℃であり,菌糸体重量は,30℃で最大値が得られた.生存温度は-20℃~42.5℃であった.菌糸体の生長を7種の針葉樹,広葉樹の心材と辺材の木粉を用いて比較した.供試した木粉のうち針葉樹のスギ,アカマツでは心材,辺材共に発菌が認められなかった.広葉樹のアベマキ,コナラ,アラカシ,ブナ,ヤマザクラでは心辺材いずれの木粉においても菌糸体の生長を確認したが,ヤマザクラでは心辺材ともに菌叢が薄く菌糸密度が低い傾向が見られた.また,木材腐朽試験の結果,ブナ材は心辺材とも重量減少率が大きく,ついでヤマザクラの辺材が腐朽した.広葉樹では全体的に辺材の腐朽力が高かった.一方,針葉樹はほとんど腐朽しなかった.本研究から,本種は高温性を有する性質を有し,生育温度の幅が広いこと,スギやマツ等の針葉樹に菌糸体の生育がしにくいことが判明した.