抄録
演者らは,これまでマレーシアサバ州デラマコット森林保護区において,森林施業が大径の倒木等に発生する硬質菌群集に及ぼす影響について報告した.今回は,小径の倒木や落枝上に発生する菌群集について調査解析したので報告する.
同森林保護区内の原生林(PRI)4地点,低インパクト伐採林(RIL)4地点,従来型伐採林(CV)3地点に設置されたプロット(0.2 ha)内において調査を行った.各プロット内に16サブプロットを設置,サブプロット内の直径2.0~10.0 cmのCWD上に発生した硬質菌類を記録した.
CVの3プロットからは6~12種が,RIL,PRIの各4プロットからはそれぞれ12~17種,14~18種が記録され,CVでは木材腐朽菌の種の豊かさが低いことが示唆された.Earliella scabrosaはCVプロットにおいて高頻度で記録されたが,RIL,PRIプロットからはほとんど記録されなかった.一方,Microporus affinis,Hyphodontia ovispora,Coriolopsis retropicta,Perenniporia ochroleucaはRILおよびPRIプロットでは高頻度で記録されたが,CVプロットではほとんど記録されなかった.
除歪対応分析(DCA)により,プロット内で記録された硬質菌群集の座標付けを行った.その結果,CVプロットの座標はRILおよびPRIプロットの座標と重複しなかったが,RILとPRIのプロットの座標は重複していた.このことから,RILプロットの木材腐朽菌群集はPRIプロットの群集と類似するが,CVプロットの群集組成はPRIプロットの群集組成とは大きく異なることが示唆された.
以上のことから,小径のCWD上に発生する木材腐朽菌に関しては,従来型の伐採をおこなっている森林では群集の劣化が認められるのに対して,低インパクト伐採林では原生林的森林に準じた群集が維持されていることが示唆された.