日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第55回大会
セッションID: A6
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ヤマイグチ属Leccinum に近縁なシクエストレート菌の2新属
*折原 貴道Teresa LebelMatthew E. Smith大前 宗之前川 二太郎
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抄録
胞子を自力で散布することができない菌類の一形態であるシクエストレート菌は,担子菌門および子嚢菌門のさまざまな系統から収斂的に進化してきたことが知られている.その多くは地下生の子実体を形成するため,きのこ類の中でも特に分類学的研究が遅れているグループの一つである.イグチ目イグチ科Boletaceae は特にこれらの菌の多様性が高い高次分類群の一つであり,今後多くの新規系統および新分類群の発見が期待される.Chamonixia 属はイグチ科ヤマイグチ属に近縁なシクエストレート属であり,北米,ユーラシアおよびオーストラレーシアから9種が報告されている.本研究では,日本を含むアジア産,およびオーストラレーシア産の既知種および本属菌と考えられる標本を対象として,これらの核およびミトコンドリアDNAの5領域を用いた系統学的検討および形態学的検討を行った.その結果,アジアおよびオーストラレーシア産標本は,ヤマイグチ属に近縁であるものの,属のタイプ種であるC. caespitosa とは独立して進化したシクエストレート菌であることが示された.更に,これらの系統はアジア産・オーストラレーシア産標本からなる系統と,日本産標本のみからなる系統とに大別され,両者は形態学的にも識別可能であった。これらの結果から、前者にRosbeeva T. Lebel & Orihara,後者にTurmalinea Orihara gen. prov. の新属名を提案する.Rosbeeva にはR. eucyanea Orihara(アオゾメクロツブタケ)およびR. griseovelutina Orihara(新和名:ネズミツチダマタケ)を含む5ないし6つの種レベルの系統,Turmalinea にはウスベニタマタケを含む3つの種レベルの系統が日本に産することが明らかとなった.今後これら2新属の系統地理に関する検討を行う予定である.
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© 2011 日本菌学会
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