日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第55回大会
セッションID: C17
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シキミタマバエの共生菌Botryosphaeria dothideaはゴールから伝播されているのか? -分生子の形態と菌糸の成長速度の比較-
*小舟 瞬升屋 勇人梶村 恒
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抄録

Botryosphaeria属菌類とタマバエ科昆虫の一群は,密接な共生関係を結んでいる.葉上に形成されたゴール(gall:虫こぶ)の内部には,菌糸の層が存在し,幼虫は主に菌糸を摂食する.また,メス成虫は,マイカンギア(mycangia)と呼ばれる器官で共生菌の分生子を運搬し,次世代に伝播する.演者らはこれまでに,シキミタマバエの共生菌をB. dothideaと同定し,羽化直後のマイカンギア内に分生子が保持されていないことを明らかにした.つまり,自身が羽化したゴールからは分生子を採取していない可能性がある.本研究では,シキミタマバエにおける共生菌の採取場所や伝播様式を明らかにするための第一歩として,ゴール上から分生子を採取する可能性について検証した.まず,B. dothideaの分生子殻が形成されたゴールを探索したところ,ごく少数(全ゴールの3.0~6.6%)であった.しかも,そのゴール内部はすべて,幼虫が不在もしくは死亡していた.したがって,何らかの要因によって幼虫が正常に発育しなかった場合に,ゴール上に分生子が生じるものと考えられる.次に,ゴール上とマイカンギア内の分生子の形態を観察したところ,両者はほとんど一致しなかった.このことから,ゴール上の分生子をメス成虫が採取している確率は非常に低いと考えられる.また,成虫が脱出したゴール由来の菌株を含めた3群間で,菌糸の培養特性(成長速度)を比較した.その結果,ゴール上の分生子由来の菌株よりも,他の2群の成長速度が有意に早かった.以上のことから,共生菌は複数系統存在し,マイカンギア内の分生子はゴール以外の場所から採取されている(水平伝播)と推察された.

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© 2011 日本菌学会
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