担子菌培養株の多くは菌糸をプレートで生育した寒天ごと切り出し凍結保護剤を加えて凍結するディスク凍結法によって保存が可能であるが,中にはこの方法によって凍結保存出来ないものも数多く存在する.近年Homolkaらにより,園芸や建築資材に用いられている真珠岩を高熱処理することで得られるパーライトという多孔性担体を使用して、主に腐朽性担子菌を凍結保存する方法が報告されていた.このオリジナルパーライト法はパーライトと5%グリセロールを含む液体培地を入れたクライオチューブで担子菌を直接培養した後液体窒素タンクで保存する方法である.我々はこの方法を彼らが使用した株よりもより凍結感受性の高い菌根性担子菌を中心に適用するとともに,より多くの担子菌に利用できるような改良を試みている.去年の第55回低温生物工学会では,7種12株(マツタケ,ハツタケ,コタマゴテングタケ,ホンシメジ,フクロタケ,シャカシメジ,アカダマスッポンタケ)の凍結感受性菌根菌に対してこのパーライト法を適用することで,3日間の凍結融解処理に対する生残性が12株のうち1株(アカダマスッポンタケ)で60 %,残りの11株で100 %(ともにn = 15)であったこと、また、凍結保護剤の添加時期と濃度を検討した結果,培養後に凍結保護剤を添加しても浸漬時間を48時間以上とることでその保護効果が得られたこと,さらに、オリジナル法では増殖阻害が起こる濃度(final 12 %)のグリセロールを培養後に添加することで60 %の生残性を100 %に改善することが出来たことを報告した.これらのことからこの改良法がオリジナル法では凍結保存出来ない菌株に対して有効な長期保存法になる可能性が示唆された.今回の発表では,去年発表した7種12株にさらに5種8株(キツネノタイマツ,ショウロ,アカハツ,ガンタケ,イカタケ)を加えた12種20株について,オリジナル法または改良法を適用することで,半年後または一年後の生残性が100 %であったことについて報告する.