日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第55回大会
セッションID: C22
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分子系統解析に基づくプレオマッサリア科菌類の分類学的再検討
*本田 和幸上山 茉亜紗平山 和幸Mel’nik Vadim A.田中 和明
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抄録
プレオマッサリア科菌類 (クロイボタケ綱, プレオスポラ目) は木本植物に寄生する子のう菌門の一群である. 本科は大型の子のう果によって特徴づけられ, また本科内の各属は子のう胞子の形態により区別されている. このように本菌群の分類には有性時代の形態が重視されているが, その無性時代はかなり多様なアナモルフ属で構成されることから, 科および属としての単系統性については疑問視されてきた. そこで本研究ではプレオマッサリア科所属菌の4 属 (Asteromassaria 属, Pleomassaria 属, Splanchnonema 属, Splanchospora 属) 14 種32 菌株を用い, SSU およびLSU nrDNA に基づく分子系統解析を行った. その結果プレオマッサリア科は単系統群ではなく, 少なくとも9 つの系統群からなることが判明した. さらにSplanchospora 属を除く本科内の3 属はそれぞれ多系統群であることが明らかとなった. 例えばPleomassaria 属の8 種は3 系統群に分かれたが, 基準種であるP. siparia と同一のクレードを構成し無性時代としてProsthemium 属をもつ6 種にのみ本属は限定されるべきであり, 基準種のクレードから逸脱するP. maxima (無性時代: Shearia 属) やP. swidae (無性時代: Corynespora 属) については新属として独立させる必要があると考えられた. ただしAsteromassaria 属およびSplanchnonema 属に関しては各属の基準種系統が不明であるため, 基準種の採集および解析が今後は必要となる. 以上のように本菌群については大幅な分類学的再編が必要であり, その際には無性時代の形態形質が分類学的指標として有効であると考えられた.
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© 2011 日本菌学会
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