生体分子は水に囲まれてその構造を維持し,機能を発揮している.したがって,生体分子を理論・計算で扱う際には適切な溶媒の記述が不可欠である.生体分子の溶媒和を記述する場合,水分子をあらわに扱いシミュレーションに含める方法や,連続体モデルで近似するなどの手法が採られることが多いが,これらとは異なったアプローチに積分方程式理論がある.本稿では液体の積分方程式理論のひとつである3D-RISM理論により,生体分子の溶媒和を扱った一連の研究について,理論の概要とその応用例,とくに分子認識に関する研究を紹介する.