抄録
エルゴード性は,Newtonの運動方程式に従って動く多数の粒子が集まっている系において平衡状態を保証する概念であり,長時間平均量が一定値に収束し,その値は平衡状態ではユニークである事を主張している.一般に,平衡系ではほとんどの観測量においてこのようなエルゴード的性質が成立している.しかし,平衡への緩和時間が観測時間より長い場合,このようなエルゴード性が破れる可能性があり,その特性を調べる事は重要である.本稿では,特に,長時間平均で定義された平均2乗変位のエルゴード特性に注目する事により,系における新たな物理的性質の知見が得られる事を示す.