抄録
ガラス転移における“フラジリティ”の概念は動力学のアレニウス性および超アレニウス性を分類するうえで重要な役割を果たし,ガラス転移の物理に普遍性と多様性をもたらしている.本稿では著者らの最近の研究に基づき,ガラスで特徴的な分子の協調運動をともなった動的不均一性について議論している.特に,Lennard–Jones 液体やネットワーク形成液体など様々なフラジリティを示す複数のシミュレーションモデルを同時に取り扱い,多点・多時間相関関数を適用し動的不均一性の時空間スケールの温度依存性を定量化した.これによりフラジリティと動的不均一性の関係を系統的に明らかにしている.