アンサンブル
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最近の研究から
凝縮系における量子分子動力学法の構築:非平衡ダイナミクスに顕在化する核量子効果の検証を中心に
金 賢得
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2014 年 16 巻 3 号 p. 188-193

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抄録
液体や固体などの凝縮系においても熱力学状態や観測量によって,ゼロ点振動や核 Wave Packet (WP)の非局在化など核の量子性が無視できないことは周知の事実であり,実際これまで様々な半量子的数値実験法が開発され,水や凝縮系水素の非自明な特性を再現しようと試みられてきた.筆者は,核の WP を分子動力学 法に組み込むことで,核量子性を取り入れた新しい半量子分子動力学法を開発した.本手法では,核の WP を含む時間発展が運動方程式の形で表されているため計算コストが抑えられ,従来の分子動力学法で用いられてきた多くの計算テクニックを流用することができる.本手法によって,従来の半量子分子動力学法が示した主要な核量子効果を再現し,さらに微視的な水素核の WP ダイナミクスがメゾスケールの水素結合ネッ トワーク組換えダイナミクスとどう相関しているかを追究した.また最近,核だけでなく電子も同時に WP 化することで,より普遍性の高い量子分子動力学法を開発した.これによって経験的パラメータやモデル相互作用ポテンシャルの導入が不要になり,核量子性を非摂動的に取り入れることが可能となった.新手法に よって,計算コストを抑えながらも液体水素の基礎物性が再現できることを確認した.
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© 2014 分子シミュレーション研究会
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