アンサンブル
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16 巻, 3 号
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追悼
特集「高分子素材の分子シミュレーション応用」
最近の研究から
  • 樋口 祐次, 久保 百司
    2014 年 16 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2014/07/31
    公開日: 2015/08/15
    ジャーナル フリー
    高分子の劣化反応と破壊現象に関してそれぞれ第一原理分子動力学法と粗視化分子動力学法を用いて研究を行った.化学反応による劣化においては高分子の変形により力が発生することを考慮し,ポリエチレンの伸長と押し込みによる切断・結合過程を調べた.切断過程が静的な計算と同じ反応経路を通るのに対し,結合過程は水素原子の反発により化学反応が阻害されることを明らかにした.この結果より我々は,切断と結合反応は静的な計算では同じ反応経路を通るのに対し,ダイナミクスを考慮すると異なる経路を通ることを見出した.高分子の破壊プロセスにおいては引っ張りによる半結晶高分子の破壊過程を調べた.その結果,亀裂の成長はアモルファス層によって阻害されることを明らかにした.半結晶高分子の破壊プロセスの応力発生において最も重要な要素は,エントロピーではなく,高分子の折り畳み構造からの緩和が難しいことによるボンドの伸び切りであることを見出した.最後に高分子鎖の切断が半結晶高分子の破壊プロセスに与える影響に関して考察したので紹介する.
  • 金 賢得
    2014 年 16 巻 3 号 p. 188-193
    発行日: 2014/07/14
    公開日: 2015/08/15
    ジャーナル フリー
    液体や固体などの凝縮系においても熱力学状態や観測量によって,ゼロ点振動や核 Wave Packet (WP)の非局在化など核の量子性が無視できないことは周知の事実であり,実際これまで様々な半量子的数値実験法が開発され,水や凝縮系水素の非自明な特性を再現しようと試みられてきた.筆者は,核の WP を分子動力学 法に組み込むことで,核量子性を取り入れた新しい半量子分子動力学法を開発した.本手法では,核の WP を含む時間発展が運動方程式の形で表されているため計算コストが抑えられ,従来の分子動力学法で用いられてきた多くの計算テクニックを流用することができる.本手法によって,従来の半量子分子動力学法が示した主要な核量子効果を再現し,さらに微視的な水素核の WP ダイナミクスがメゾスケールの水素結合ネッ トワーク組換えダイナミクスとどう相関しているかを追究した.また最近,核だけでなく電子も同時に WP 化することで,より普遍性の高い量子分子動力学法を開発した.これによって経験的パラメータやモデル相互作用ポテンシャルの導入が不要になり,核量子性を非摂動的に取り入れることが可能となった.新手法に よって,計算コストを抑えながらも液体水素の基礎物性が再現できることを確認した.
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