2016 年 18 巻 2 号 p. 68-73
現在の量子力学ベースの分子シミュレーションは,O(N)法,Divide-and-Conquer法,マルチスケールQM/MM法など,系の局所部分への分割可能性を仮定しているものが多い.その理論的基盤となっているのがKohnらによって提唱されている Nearsightedness of electronic matter(NEM)という概念である.ただKohnらのNEMは無限系を対象としており,有限系のNEMの吟味は明白な形では行われてこなかった.本稿では著者らが近年行ってきた有限系(モデル系,分子系)のNEMの解析について解説する.