2017 年 19 巻 2 号 p. 99-104
本記事では「京」コンピュータと汎用分子動力学計算ソフトウェアMODYLAS を用いて行った電解質水溶液中でのポリオウィルスエンプティカプシドの全原子分子動力学計算の概要を説明する. 生体系で重要な長距離静電相互作用を, 大規模並列に適した高速多重極展開法(FMM) により計算することで, 1,000 万原子規模の巨大系についても長時間の分子動力学計算を可能とした. 平衡状態でのトラジェクトリに対する解析から, ポリオウィルスカプシドの安定性についての分子論的知見を得た. 研究の過程で生じた大規模系特有の問題についても記す.