痛風と核酸代謝
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原著 4
肥満小児のメタボリックシンドローム診断における血清尿酸値の有用性
豆本 公余久保田 優小嶋 千明東山 幸恵永井 亜矢子
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2012 年 36 巻 2 号 p. 113-120

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抄録

肥満児において血清尿酸値が上昇する傾向にあることは知られているが,メタボリックシンドローム(MetS)との関連に関しては報告がほとんど見られない.本研究では,各年齢のBMI z-score +2以上の肥満児を対象に血清尿酸値のMetSの関連とその診断における有用性を検討した.対象者は,2006~2009年にA市の小児肥満二次検診を受診したBMI z-score +2以上の6~15歳の肥満小児1,261名(男764名,女497名)である.血清尿酸値の小児基準値(久保田が本学会誌で2009年に報告)を基に各年齢の尿酸値のz-scoreを求め,z-score +2以上を高尿酸血症とした.MetSの診断基準は大関らの小児用基準を用いた.高尿酸血症は23.1%(291/1,261名)に見られ,その割合は男子に有意に高かった.MetSは高尿酸値群291名の37.1%(108名)に,正常尿酸値群970名の15.6%(151名)に見られ両者には有意差があった.血清尿酸値のz-scoreを4段階に層別化し各群のMetS罹患率を比較した所,z-score 1未満群に比べ3以上の群はリスクが7.2倍であった.高尿酸値群と正常尿酸値群におけるMetS 各項目の多変量解析では,腹囲,中性脂肪,HDL-コレステロールと有意の関連が見られ,年齢,性別や血糖値とは全く関連が無かった.ROC解析による小児MetS診断能の比較では,血清尿酸値 z-scoreのAUC (Area under the curve)は0.66でHDL-コレステロールや腹囲/身長とほぼ同等の値であった.本研究は対象が肥満者に限定されてはいるが,小児のMetS罹患と血清尿酸値の関連が多方面からの解析で明らかになった.今後,対象者を非肥満者に広げると共に,高尿酸血症と将来の生活習慣病罹患との関連を調査するコホート研究が重要である.

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© 2012 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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