本稿は生体分子系に対する圧力効果の最近の研究と,このような効果を正確に評価するためのサンプリング手法である拡張アンサンブル法の紹介をする.熱力学変数である圧力はタンパク質の構造を考察する上で使用されてきており,このような状態を分子シミュレーションで正確に扱うことは重要である.このようなことから,サンプリング効率を向上させる温度・圧力に関する焼き戻し法の開発を行い,ペプチドやタンパク質構造の圧力依存性について研究を行ってきた.サンプリング効率の向上により,広い圧力領域での熱力学量を精度よく計算できるようになった.またその結果として,タンパク質の圧力変性などに見られるような構造変化も捉えることができるようになってきた.