ポリロタキサンとは一本の長い高分子鎖に多数の環状分子が包接した超分子構造を持つ超分子ポリマーであり,環状分子が軸高分子上をスライド並びに回転することができるという特異なダイナミクスを有する.このスライド運動の存在によりポリロタキサンを応用した材料は従来の高分子材料にない特異な物性を示し,これらの材料は環動高分子材料と呼ばれる.特にポリロタキサンの環状分子同士を架橋することで環動ゲルと呼ばれる柔軟・強靭な高分子ゲルを形成し,従来の固定架橋ゲルと全く異なる構造を持つ.しかしながら,これらの優れた力学物性の起源は明らかになっていなかった.そこで本研究では分子動力学(MD)法を用いてポリロタキサンのダイナミクスの解明,並びに環動ゲルの物性発現メカニズムの解明を試みた.