アンサンブル
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23 巻, 3 号
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特集「生体分子シミュレーション」
最近の研究から
  • 苙口 友隆
    2021 年 23 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    水素結合は生体分子の機能にとって重要な役割を果たす相互作用であるが, 近年, 生体分子研究の重要なツールとなっている分子動力学シミュレーションでは, 極性原子の非共有電子対を考慮していないため, 水素結合の方向性を正しく取り扱えていない可能性が高い. そこで本研究においては, 非共有電子対を新たな電荷サイトとして露わに扱う電荷モデルを分子動力学シミュレーションの力場に導入し, 水素結合方向性に対して非共有電子対が与える影響を評価した.

  • 米谷 佳晃, 安達 基泰
    2021 年 23 巻 3 号 p. 182-197
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    蛋白質からリガンドが解離する際,リガンドが結合していた場所は水分子に置き換わる.そのため,リガンド解離において水分子が関係していることは確かである.しかし,リガンド解離の起源について「水のアクセスが蛋白質-リガンド解離を引き起こすのか,それとも,リガンド解離の結果として水がアクセスするのか」といった部分は明確になっていない.本稿では,蛋白質表面を模擬したモデル結合サイトとトリプシン-ベンズアミジンの分子動力学シミュレーションから,水のアクセスとリガンド解離の関係を検証した最近の研究成果について紹介する.水のアクセスs とリガンド解離r の2つを変数とした自由エネルギー地形G(r;s) を解析することで,両者の関係が明らかになってきた.

連載
  • 構造的性質の計算方法
    三上 益弘
    2021 年 23 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    これまでは分子シミュレーションの方法について説明してきた.これからは,分子シミュレーションから得られた座標と運動量(分子動力学法のみ)を用いて得られる熱力学的性質,構造的性質,輸送係数,スペクトルの計算方法について説明する.これらの諸量は,実験的に測定される量であるので,分子シミュレーションの方法の検証ができると同時に,自然界で起こっている現象を分子シミュレーションにより原子レベルで詳細に調べることが可能である.今回は,構造的性質の計算方法について説明する

博士論文紹介
  • 保田 侑亮
    2021 年 23 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    ポリロタキサンとは一本の長い高分子鎖に多数の環状分子が包接した超分子構造を持つ超分子ポリマーであり,環状分子が軸高分子上をスライド並びに回転することができるという特異なダイナミクスを有する.このスライド運動の存在によりポリロタキサンを応用した材料は従来の高分子材料にない特異な物性を示し,これらの材料は環動高分子材料と呼ばれる.特にポリロタキサンの環状分子同士を架橋することで環動ゲルと呼ばれる柔軟・強靭な高分子ゲルを形成し,従来の固定架橋ゲルと全く異なる構造を持つ.しかしながら,これらの優れた力学物性の起源は明らかになっていなかった.そこで本研究では分子動力学(MD)法を用いてポリロタキサンのダイナミクスの解明,並びに環動ゲルの物性発現メカニズムの解明を試みた

  • 北畑 雅弘
    2021 年 23 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    界面張力は, 不均一系の構造生成における自由エネルギーの記述に重要な役割をはたすが, 分子論的な理解が進んでいない系も多い. 代表例として, 水中での両親媒性分子の球状ミセル形成と, 非溶媒誘起相分離による多孔質形成が挙げられる. 本研究では, これらの分子論的描像を明らかにするため, 両親媒性分子/溶液および固体高分子/溶液に働く界面張力の解析方法を提案した. 前者の解析のため, ミセル中心を原点とした, 任意の半径の球面に作用する局所圧力テンソルから界面張力を求める方法を提案し, 球状SDS ミセルの構造安定性に対する, 界面張力の寄与を分子レベルで明確化した. 後者の解析のため, 結晶および非晶表面上の液滴のMD と修正Young の式, Cassie 方程式を組合せた評価方法を提案し, 高分子の微視的構造と溶液組成の変化に対する濡れ性および界面張力変化を, 界面の分子構造と相互作用に結び付けることに成功した.

研究室だより
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