2023 年 25 巻 1 号 p. 28-33
有機分子にX 線を照射すると内殻イオン化・Auger 緩和の後に生成した電子励起2 価カチオンの無輻射失活や光解離などのX 線光化学反応が起きる.このX 線光化学反応には102-103 電子励起状態が関与するため,効率的な反応動力学計算法が必要である.本稿では,2 空孔配置間相互作用法を用いてLinear-vibronic coupling モデルポテンシャルを構築し,そのうえでFewest-switching 法に基づくSurface-hopping 非断熱反応動力学計算を行った試みを紹介する.本手法を非ベンゼノイド系芳香族分子Tropone に適用した結果,100 状態以上の電子励起状態を数百fs で駆け下りていく超多段階無輻射失活過程の途中で100 fs 程度高エネルギー電子励起励起状態にトラップされることを見出した.