2024 年 26 巻 3 号 p. 244-250
液体に強力な超音波を照射すると,超音波キャビテーションと呼ばれる気泡の生成,成長,圧壊を伴う流動現象が生じる.気泡が圧壊する際に,局所的かつ瞬間的な高温高圧場や衝撃波が生じるが,これらの作用は洗浄や加工,化学反応の促進など,広く工業的に応用されている.超音波キャビテーションは工学的に極めて重要な研究課題であるが,強い非平衡状態であることと,キャビテーション場がミクロスケールとマクロスケールを介在することなどが,その解析を極めて困難にしている.本稿では,分子動力学シミュレーションによる超音波キャビテーションの解析を紹介する.