2025 年 27 巻 2 号 p. 155-161
本稿では,分子シミュレーションでの利用を想定し,計算効率が良い新しい疑似乱数生成器(Pseudo Random Number Generator: PRNG)を提案する.本手法による計算速度の向上を示すために,散逸粒子動力学(Dissipative Particle Dynamics: DPD)シミュレーション向けに既存の手法と比較を行う.DPD法は,分子の熱ゆらぎを乱数によって再現することで,メソスケールの物理現象を効率的に取り扱う事ができる.しかし,並列計算環境で運動量を保存しながら乱数を用いるには,暗号化などの追加計算が不可欠であった.本研究では,DPD法の計算工程そのものに高品質な乱数が内在していることを示し,それを活用することで暗号化を要しない効率的なPRNGを提案する.本手法は複雑な乱数生成アルゴリズムや暗号処理に依存しないため,最小限の計算コストで乱数を生成可能である.本手法は他の多くの物理・化学シミュレーションでも,高速な乱数生成を可能にする可能性がある.