論文ID: 74-1-1
オオムギとコムギは共に近東の乾燥地に起源するため,湿潤な我が国の環境で栽培するには特性の改良が必要である.我が国でのムギ類生産の課題の一つは赤かび病である.最近,オオムギの抵抗性候補遺伝子が同定され,かび毒抑制効果が示された.現在,その成果をコムギのかび毒低下に活用する研究が進められている.また,収穫期の雨による穂発芽被害の防止に有効な,発芽の長短を決定するオオムギの主要な種子休眠性遺伝子Qsd1は著者らによって単離された.さらに,Qsd1の3種類のコムギ同祖遺伝子に共通する配列を標的としたゲノム編集によって作出した三重変異体では種子休眠が1週間程度長くなり,穂発芽耐性向上の効果が期待される.