マイコトキシン
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Eurotium (Aspergillus) cheualieri産生色素flavoglaucinによるミトコンドリア電子伝連阻害作用―II. 複合体IIIとの相互作用
河合 清久田 和夫中丸 輝彦野沢 義則北村 二朗
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1986 年 1986 巻 24 号 p. 13-18

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抄録

黒変米原因菌Eurotium (Aspergillus) chevaZieri Manginをはじめ,Eurotium属の多くの菌により産生される二次代謝産物flavoglaucinは動物実験により肝臓毒性を示すことが最近証明された.In vitro実験において,flavoglaucinは単離ラット肝ミトコンドリアの急激な膨潤化を誘起し,その結果ミトコンドリアの酸化的リン酸化反応の脱共役uncouplingを起こさせ,ATPの合成を阻害する.Flavoglaucinは除共役作用を示すと同時に顕著な呼吸抑制作用を示し,これらの作用はflavoglaucinによる肝毒性発現の一機序を説明しているものと思われる. Flavoglaucinは無傷ミトコンドリアの呼吸だけでなく,ミトコンドリアの内膜の反転した膜小胞(電子伝達粒子,ETP)の呼吸を抑制し, flavoglaucinが電子伝達酵素,特に複合体(complex)IIIを直接阻害することにより呼吸抑制作用を発現することが示唆された.今回,flavoglaucinによる電子伝達阻害作用の機序をETPのコハク酸酸化系反応を用いてさらに詳細に検討した結果,flavoglaucinがミトコンドリアの電子伝達酵素,特にcomplexIIIのチトクロムbc間の電子伝達反応を阻害することが判明し,かつユビキノン(CoQ10)と拮抗することを示唆する結果が得られたので報告する.

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