1989 年 1989 巻 30 号 p. 29-31
Aspergillus flavusなどによって生産されるAFB1は,種々の実験動物に肝癌を誘発することが知られている.また,東南アジアやアフリカにおいて, AFB1汚染食品の摂取量と肝癌発生率との間には統計的に強い相関関係があることが報告されており,肝炎ウイルスとともに, AFB1はヒト肝癌発生の一因であると考えられている. 我々はAFB1誘発ラット肝癌においてc-mycとc-Ha-ras癌遺伝子の発現が著しく増加していることを明らかにした.また, McMahonらやSinhaらもAFB1によってc-ras癌遺伝子ファミリーに点突然変異がひき起され,活性化されることを報告している.さらに,我々はラット肝癌細胞であるH4-II-E細胞を用いた実験より, AFB1がGCレセプターに作用し,チロシントランスアミナーゼの誘導を転写段階で阻害することを明らかにした. 今回,AFB1が雄性ラット肝に選択的に癌を誘発することに着目し,AFB1誘発ラット肝癌より樹立したKagura-2細胞の増殖に対する性ステロイドホルモン,GCホルモンおよび細胞の分化誘導剤の作用を検討した.