抄録
大動脈乱流などの非定常乱流のスペクトル解析では, 乱流の性質が時間的に変化するという意味での非定常性と, 時間的に変化する移流速度をもつ流れに乗って乱流成分が運動するという意味での非定常性とが同時はに存在していることに注意すべきである.本研究では, 後者, すなわち非定常移流速度場におけるTaylorの凍結乱流仮説の適用について考察した.乱流の空間的構造に関する情報を得るためには, 波数 (空間) スペクトルを求める必要があるが, 定常移流速度の場合には, スペクトルの無次元化操作の一部として周波数-波数変換を行えばすむ.しかし非定常移流速度の場合にはこの方法を用いることができない.そこで本研究では, 非定常移流速度を用いた非線形変換により, 時間-距離変数変換を施した測定データのスペクトルを求める方法を提案した.イヌの大動脈乱流の実験データにこの方法を適用して得られたスペクトルと, 従来の方法で求めたそれとでは, 高 (周) 波数域で明きらかな差があった.