日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
インスリン分泌機構解明の最前線
柴崎 忠雄清野 進
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2011 年 100 巻 5 号 p. 1418-1424

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抄録

近年,糖尿病の新たな治療薬としてインクレチン関連薬が注目されている.インクレチンは膵β細胞のcAMP産生を増加させることによって,プロテインキナーゼA(PKA)依存性経路およびPKA非依存性経路を介してインスリン分泌を増強する.最近,筆者らはPKA非依存性経路を担うEpac2Aが,インスリン分泌促進薬として広く使用されているスルホニル尿素(SU)薬によって活性化されることを新たに見いだし,またEpac2Aを欠損させたマウスではSU薬によるインスリン分泌作用や血糖降下作用が減弱することを明らかにした.これらの結果はEpac2AがSU薬とインクレチンの共通の作用標的であることを示している.高齢者2型糖尿病患者に対してSU薬とインクレチン関連薬を併用すると重篤な低血糖を招来することも報告されていることから,Epac2Aを介したインスリン分泌機構の解明は,臨床的にも重要な課題であると考えられる.

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© 2011 一般社団法人 日本内科学会
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