日本内科学会雑誌
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100 巻, 5 号
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内科学会NEWS
特集 腎障害をきたす全身性疾患―最近の進歩
Editorial
トピックス
I.代謝疾患
  • 守屋 達美
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1199-1205
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症(以下腎症)は,「糖尿病という全身疾患」に伴う腎疾患の代表である.慢性の高血糖により生じる血管合併症であるが,最近は様々な病因の関与が指摘されている.早期の臨床的変化は微量アルブミン尿である.以前は顕性蛋白尿が出現すると非可逆的に進行し,慢性腎不全に至るといわれていたが,近年は血糖/血圧/脂質のコントロールを厳重に行うことにより,寛解する例がみられる.腎症の診断を的確に行うことや治療効果の判定はきわめて重要であるが,いまのところの唯一の指標である尿アルブミンには限界があることも指摘されつつある.今後は,尿アルブミンを含めた診断マーカーの意義をさらに検証し,糖尿病患者の大多数を占める正常アルブミン尿期の患者を綿密に診ることの重要性を強調したい.
  • 細谷 龍男, 大野 岩男
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1206-1212
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    高尿酸血症は高血圧・CKDの発症・進展と密接に関連することがわかってきている.CKDにおいて,アロプリノールによる高尿酸血症治療は高血圧・腎障害の進展抑制をきたし,逆に高尿酸血症治療の中断はRA系抑制薬非服用群においてのみに,高血圧・腎機能の増悪をみるとされている.このことから,高尿酸血症がCKDにおける高血圧・腎障害の進展に関与する機序にはRA系の亢進が重要な役割を演じていることが示唆される.
  • 杉江 秀夫
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1213-1219
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    糖原病に合併する腎障害は,(1)筋型糖原病に起因する横紋筋融解症に合併する場合と(2)糖原病I型(von Gierke病)によるものが重要である.横紋筋融解症では筋細胞から逸脱したミオグロビンなどが腎血管収縮,組織障害,尿細管障害などを起こし腎不全に至る.糖原病1型では低血糖に伴う二次性の代謝異常が腎障害を引き起こす.I型では適切な食事療法などで代謝のコントロールを良好に保つことで,腎合併症が改善する.
  • 斉藤 喬雄, 小河原 悟, 伊藤 建二, 松永 彰
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1220-1226
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    腎障害をきたす全身的な脂質代謝異常症として,広義には最近話題になっているメタボリック・シンドロームなども上げられるが,ここでは,原発性脂質異常症による腎障害を取り上げる.これらは,遺伝的素因に環境因子が加わって発症するまれな疾患とされてきたが,検査法の開発とともに,発見される割合が増加している.病因や進行機序についても新たな知見が報告されており,治療法の進歩により予後の向上も図られている.
II.自己免疫疾患
  • 湯村 和子
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1227-1236
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    自己免疫性疾患,特に膠原病の中で腎障害を起こす頻度の高い代表疾患は,全身性エリテマトーデス(SLE)によるループス腎炎(LN)である.SLEの分類基準は従来のままであるので,腎の項目でのLNは尿異常を伴う糸球体病変に注目されていることには変わりない.LNは,免疫複合体腎炎の代表であり,多彩な糸球体病変を認める.ISN/RPSによるLN組織分類も,普及してきたが,従来のWHO分類と同様にclass4のび漫性LNが,高頻度に認められる.LNの組織像を治療にどう活かしていくのか,今後も継続して検討し続けなければならない.本邦においてカルシニューリン阻害薬のタクロリムス(タクロリムス水和物)がLN保険適応になり,治療が変貌してきているところである.LNの治療の最近の変遷を中心に述べるが,治療抵抗性の抗リン脂質抗体出現の難治病態に関しても最後に少し触れておく.
  • 東 直人, 佐野 統
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1237-1243
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の日常診療ではしばしば尿所見異常や腎機能障害に遭遇する.RA固有の腎障害は軽微であることが多いが,抗リウマチ薬や非ステロイド性抗炎症薬の長期使用による薬剤性腎障害やアミロイドーシスに伴う腎障害が問題となることが多い.RAに腎障害が併存することで,RAの治療に制限が生じ,また心・血管系イベントや骨粗鬆症などの合併症が増加するため,病態把握と適切な対応が重要である.
  • 吉田 雅治
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1244-1253
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    結節性多発動脈炎(PN)は高血圧を呈し,徐々に腎不全が進行することが多い.顕微鏡的多発血管炎およびWegener肉芽腫症のANCA関連血管炎を中心とする糸球体病変を認める腎血管炎は,動脈病変のみの腎血管炎よりも急速に末期腎不全に進行しやすい.ANCA関連血管炎のなかでも顕微鏡的多発血管炎,Wegener肉芽腫症は肺出血の有無および肺を中心とする難治性感染症の合併が生命予後を左右することが多い.腎血管炎に共通した治療は早期に診断し,疾患活動性の高い時期にステロイド治療,免疫抑制薬を中心とした強力な免疫抑制療法を病型・病期に応じて適切に行うことである.ANCA関連血管炎であるWegener肉芽腫症は,ANCA力価およびCRP値の経時的測定が免疫抑制療法の投与量の判断に参考になる.免疫抑制療法と並行して抗凝固,抗血小板療法を行う.腎不全が進行した場合(血清クレアチニン値>6mg/dl)は,早めに透析療法を開始する.寛解後の再発および感染症の予防対策を含めた長期経過観察による予後の改善が重要である.
  • 有村 義宏, 川嶋 聡子, 吉原 堅
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1254-1261
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    MPO-ANCA関連腎炎の発症機序には好中球活性化,MPOの関与が推測される.MPO-ANCA関連腎炎の生命予後は,やや改善傾向にあるが,依然として死亡率・透析導入率は高い.MPO-ANCA関連腎炎の生命予後,腎予後の一層の改善には早期診断が最も重要である.高齢で初発の蛋白尿,顕微鏡的血尿症例ではMPO-ANCA関連腎炎を念頭にいれて,血清クレアチニン値,eGFR,MPO-ANCAを測定する必要がある.
  • 林 良夫, 新垣 理恵子, 石丸 直澄
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1262-1268
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群はドライアイやドライマウスを臨床症状とする原因不明の自己免疫疾患である.病因的アプローチを加えるため疾患モデルを開発し,ヒトとも共通する自己抗原120kDα-フォドリンを同定した.局所に浸潤するCD4陽性T細胞の多くがFasLを発現し,標的細胞のFas抗原との間でアポトーシスが成立している.また,唾液腺にエストロゲン欠乏依存性にアポトーシスを誘導するRbAp48遺伝子を同定した.
  • 川村 哲也, 上田 裕之
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1269-1274
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Henoch-Schönlein紫斑病は全身性血管炎の1病型であり,紫斑,腹部症状,関節症状,糸球体腎炎を主症状とする.Henoch-Schönlein紫斑病における腎炎の合併は,全患者の35%(20~60%)にみられるが,成人では小児よりも高頻度である.Henoch-Schönlein紫斑病全体としての腎予後は良好であり,末期腎不全に至る率は2%程度と言われている.しかし,腎炎の発症時にネフローゼ症候群や腎機能低下などを呈する重症例の腎予後は必ずしも良好ではなく,副腎皮質ステロイド薬,免疫抑制薬などによる積極的治療が必要と考えられる.
III.パラプロテイン血症
  • 安倍 正博
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1275-1281
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    腎障害は多発性骨髄腫に高率に併発し,骨髄腫の進行とともにその発生頻度が高くなる.本症では骨髄腫細胞から多量に産生されるBence Jones蛋白の腎毒性,高カルシウム血症や鎮痛薬などの薬剤の反復投与に起因し腎障害が惹起される.骨髄腫に対する治療が奏効すれば治療経過とともに腎障害が改善することが多いため積極的な骨髄腫に対する治療や高カルシウム血症の対策が重要である.
  • 高橋 直生, 木村 秀樹, 吉田 治義, 内木 宏延
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1282-1288
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    アミロイドーシスは,全身の臓器の細胞外領域に難溶性のアミロイド線維が沈着し,機能障害を引き起こす一連の疾患群で,腎臓は機能障害が好発する臓器である.腎アミロイドーシスは,様々な程度の蛋白尿や腎機能低下を伴い,高齢者のネフローゼ症候群の原因になっている.パラプロテイン血症に伴う腎アミロイドーシスはALアミロイドーシスがほとんどであるので,本稿ではALアミロイド線維形成のメカニズムを踏まえて知見を概説する.
  • 岸 誠司, 土井 俊夫
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1289-1295
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    クリオグロブリン血症は主として細動脈レベルに生じる全身性血管炎を生じる疾患で,極めてC型肝炎ウイルスとの関連が強い.皮膚,関節,神経系,腎臓等が主として標的となり,特にC型慢性肝炎患者において皮膚病変を認めた場合には注意が必要である.活動性の高い腎病変や全身性の血管炎を呈する免疫抑制療法や血漿交換療法の必要な重症例も存在する.とくにC型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症については,B細胞関連リンパ増殖性疾患のひとつとして定義されるようになり,慢性的なC型肝炎ウイルス感染と,Bリンパ球のクローン性増殖との関係も次第に分子レベルで解明されつつあり,抗B細胞療法としてのリツキシマブ投与など治療法も進歩しつつある.
IV.その他
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 赤柴 恒人
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1394-1400
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群(SAS)は,初めて報告されてから未だ35年しか経過していない疾患であるが,この間の研究の発展は目を見張るものがある.多くの疫学的研究により,SASはcommon diseaseの一つであることが明らかとなり今後さらに増加する傾向にある.診断基準については大きな訂正が行われ,呼吸の完全停止がなくとも換気量が低下して低酸素が明らかに見られる場合を低呼吸と定義し,1時間当たりの無呼吸と低呼吸の和が5以上をSASと診断することがコンセンサスとなった.SASの臨床研究の発展には米国での多施設合同大規模研究が大きく貢献しており,特にSASと高血圧をはじめとする循環系合併症との直接的な関連が明らかされただけではなく,最近では糖尿病との関連も明らかになりつつある.治療に関してもnasal CPAPを中心に多くの発展がみられ,また,これまであまり注目されていなかった中枢型SASにおいても心不全との関連で注目されている.
  • 五味 晴美
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1401-1408
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    二十一世紀は,ヒト,モノ,情報が瞬時に移動する時代となったが,感染症教育もそうした時代に即応した人材の育成が必要となっている.また感染症の診療や対策は,グローバルな視点が必須となっている.現在,医師の育成制度に関しては,大学教育,大学院教育,大学または大学院教育の混合型の制度で医師を育成している国が大半である.世界医学教育連名(WFME)は,各国に対して医学教育に関する相談業務や医学教育の標準化に関する業務等を行っている.本稿では,感染症教育では,日米欧などの主要先進国の感染症教育がどのように行われているのか,その現状を概観した.国内では,感染症教育に関しては,臓器横断的な教育の実践が望まれ,また医学部での臨床前教育・臨床教育,初期研修,後期研修,生涯教育と一貫した教育体制の整備が必要である.今後,大学,各関連学会,政府機関などが連携し,国内での「感染症専門医」の育成やあり方について具体的な議論や実践が不可欠である.
  • 糸井 隆夫, 森安 史典
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1409-1417
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    膵・胆道疾患における内視鏡治療は従来内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)関連手技が基本であったが,近年超音波内視鏡(EUS)を用いた新しい内視鏡治療が試みられている.ERCP関連手技では大バルーンを用いた巨大結石除去術,急性胆嚢炎に対する内視鏡的胆嚢ドレナージ,そして胆管閉塞に対する磁石吻合術などの新しい治療法が開発されている.また内視鏡機器の進歩として電子経口胆道鏡や小腸バルーンが開発され,それらを用いた治療的ERCPも近年盛んに行われている.さらには細経内視鏡を経口的に直接胆管内に挿入し診断治療を行う試みもされている.一方,EUS関連治療手技は以前より行われていた膵仮性嚢胞ドレナージの他にも胆道ドレナージや感染性膵壊死に対する内視鏡的ネクロセクトミーが行われている.また新しい試みとして樹状細胞等を用いたEUSガイド下の抗腫瘍療法が世界中で行われており,近い将来こうした治療が確立されることが期待される.
  • 柴崎 忠雄, 清野 進
    2011 年 100 巻 5 号 p. 1418-1424
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    近年,糖尿病の新たな治療薬としてインクレチン関連薬が注目されている.インクレチンは膵β細胞のcAMP産生を増加させることによって,プロテインキナーゼA(PKA)依存性経路およびPKA非依存性経路を介してインスリン分泌を増強する.最近,筆者らはPKA非依存性経路を担うEpac2Aが,インスリン分泌促進薬として広く使用されているスルホニル尿素(SU)薬によって活性化されることを新たに見いだし,またEpac2Aを欠損させたマウスではSU薬によるインスリン分泌作用や血糖降下作用が減弱することを明らかにした.これらの結果はEpac2AがSU薬とインクレチンの共通の作用標的であることを示している.高齢者2型糖尿病患者に対してSU薬とインクレチン関連薬を併用すると重篤な低血糖を招来することも報告されていることから,Epac2Aを介したインスリン分泌機構の解明は,臨床的にも重要な課題であると考えられる.
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シリーズ:内科医に必要な救急医療
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