日本内科学会雑誌
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I.インシデント・アクシデントの現状
4.転倒転落の頻度と予防
大出 幸子寺井 美峰子高橋 理大泉 綾嶽肩 美和子福井 次矢
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2012 年 101 巻 12 号 p. 3396-3403

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抄録

入院中の患者の転倒転落は,大腿骨骨折などをきたし,在院日数の延長,患者のQOL低下に大きく関わる重大な事故である1)2).米国の急性期病院での入院患者の転倒転落発生率(‰=件/1,000入院)は,2001年のInouye3)らの報告によると,3~20‰で,一方わが国における急性期病院の転倒転落率は,2010年から日本病院会が30の急性期病院(2012年度参加施設は145病院)を対象に行っているクオリティーインディケーター(QI)プロジェクト(QIプロジェクト)の報告では0.7~3.8‰とされ,Inouye3)らの報告に比べるとかなり低い.2008年10月1日より,米国のCenter for Medicare and Medicaid Servicesでは,入院中の転倒転落を"never event"「起こってはならないこと」とし,入院中の転倒転落は限りになく予防すべきであるとされている.入院中の転倒転落に関する研究は,世界中で数多く,急性期病院の入院患者を対象とした複合型予防介入プログラムの効果検証を目的としたランダム化比較試験も報告されている.
本誌では,今までに報告された代表的な転倒転落予防に関する研究をまとめ,また,聖路加国際病院における転倒転落予防対策について報告する.

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© 2012 一般社団法人 日本内科学会
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