2012 年 101 巻 3 号 p. 787-794
日本人の死因の第3位である肺炎は,過去30年間以上にわたって死亡率が増加しており,近い将来死因の第3位となることが危惧されている.肺炎による死亡が増加している原因は,急速に進む高齢化と,高度に進歩した医療自体にあると考えられる.このような状況の中,従来の市中肺炎(CAP),院内肺炎(HAP)診療ガイドラインでは対応が難しい,介護や医療ケアに関連する肺炎が近年増加している.そこで日本呼吸器学会より,新しく医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインが作成された.NHCAPには「難治性・再燃性で予後不良の肺炎」と,「耐性菌による肺炎」の2つの大きなタイプが存在する.重症度や耐性菌リスクの面では,CAPとHAPの中間に位置している.治療に関しては,「治療区分」が新しく設定され,肺炎の重症度だけでなく患者背景をよく考慮して,治療方針を決定する.NHCAPで多い誤嚥性肺炎の予防には,口腔ケアが有効である.また,インフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチン両者の接種が推奨される.