日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
生活習慣病の成因としての環境因子
上島 弘嗣
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2012 年 101 巻 5 号 p. 1404-1412

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抄録
わが国は1965年当時,脳卒中死亡率が世界一高かったが,その後,1990年にかけて80%以上も低下し,1980年を過ぎるころから世界一の長寿国となった.この要因は,国民の高かった血圧値が低下したためであり,遺伝子の変化ではなく,環境要因の変化のためであった.心筋梗塞が少ないのも,脂肪の少ない日本食文化にある.日本人でも,血清総コレステロール値が高くなれば心筋梗塞は増える.ハワイに移民した日系米人の研究は,端的にそのことを示している.環境要因のコントロールは,個人個人に対する利益は少ないが集団全体への影響は大きい.G Roseが"Population Strategy"の概念を生み出し,そのことを証明した.しかし,リスクの低い人への生活環境要因でのコントロールは大変難しい.今後,多くの知恵を出し合い,環境因子のコントロールに向けた有用な対策を考えださねばならない.特に食事における"欲望"のコントロールは容易ではない.
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© 2012 一般社団法人 日本内科学会
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