日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
慢性咳嗽の診断・治療の最前線
藤村 政樹
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2012 年 101 巻 7 号 p. 2072-2077

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抄録

慢性咳嗽とは,「問診,身体所見,胸部単純X線写真やスパイログラフィーなどの一般検査では原因を特定できない8週間以上持続する咳嗽が唯一の症状であるもの」と定義する.本邦における慢性咳嗽の三大原因疾患は,咳喘息(乾性咳嗽),アトピー咳嗽(乾性咳嗽)および副鼻腔気管支症候群(湿性咳嗽)であり,この順に頻度が高い.咳喘息とアトピー咳嗽の病態解明は主に本邦において進められ,治療的診断から病態的診断への過渡期に差し掛かっている.乾性咳嗽の発生機序には,少なくとも以下の二つがある.一つは気管支壁表層に存在する咳受容体の感受性亢進によるものであり,アトピー咳嗽,胃食道逆流による咳嗽,アンジオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽などが該当する.もう一つは気管支壁深層に存在する気管支平滑筋の収縮がトリガーとなるものであり,咳喘息や気管支喘息の咳嗽が該当する.咳嗽は自然軽快や治療抵抗性の場合があり,治療的診断は誤診を招くため,病態的診断への脱却が不可欠である.

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© 2012 一般社団法人 日本内科学会
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