抄録
症例は77歳,男性.呼吸困難,浮腫の精査にてうっ血性心不全と診断され,利尿薬投与にて一時的に心不全症候は改善したが,再増悪し入院となった.動脈血ガス分析でアニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスを認め,脚気心に伴う高心拍出性心不全を疑い,ビタミンB1の投与を開始したところ循環動態は劇的に改善したが,経過中にWernicke脳症を併発した.治療抵抗性の心不全を認めた場合,脚気心の可能性を考え早期にビタミンB1投与を開始するとともに,意識障害を合併した場合はWernicke脳症の合併も考慮した積極的な頭部MRI施行が望ましいと考えた.