日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
第VIII因子機能代替バイスペシフィック抗体を用いた新規血友病Aの治療
嶋 緑倫
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2017 年 106 巻 11 号 p. 2446-2452

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抄録

頻回の経静脈的投与による身体的精神的負担,活動性の高い患者におけるトラフレベルの設定,インヒビターの発生リスクやインヒビター陽性例の治療などは血友病治療における大きな課題である.最近,これらを解決するために,活性型第VIII因子機能を代替する抗FIXa/FX認識ヒト型遺伝子組み換えバイスペシフィック抗体(emicizumab;ACE910)がわが国で創製された.本製剤は抗体製剤であり皮下投与が可能である.さらに,血中半減期は約4~5週で,従来の第VIII因子製剤の半減期(約10時間)と比較するとはるかに長い.さらに,FVIIIa作用はvon Willebrand因子により保護される必要もなく,インヒビターの有無に関わらず有効である.すでに血友病A患者を対象とした第1/2相臨床試験が実施され,週1回の皮下投与によりインヒビターの有無に関係なく年間出血回数が激減することが報告された.現在,第3相国際臨床試験が実施中である.本製剤は正常な活動や関節機能を実現できるポテンシャルを有する.

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