日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
老化と腎臓病
脇野 修伊藤 裕
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2017 年 106 巻 5 号 p. 1019-1028

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抄録

腎臓は尿細管の再吸収・分泌を通じて大量のエネルギーを消費する臓器であり,加齢に伴い,その機能は低下する.これまで様々な分子メカニズムが個体の寿命の調節に関わることが知られているが,それらの経路は腎蔵の老化を制御する経路としても重要である.それらはオートファジー機能不全,ミトコンドリア機能不全,mTOR(mammalian target of rapamycin),インスリンシグナルの異常,sirtuin遺伝子の発現低下,レニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system:RAS)の活性化,klotho遺伝子とリン代謝異常,ゲノム不安定性,テロメア短縮などである.これらの経路への介入は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の有効な治療戦略となり得る.その一方で,CKDは個体の加齢を促進させる.CKDの進行に伴い,frailtyといった老化の表現系が明らかとなることが多い.個体老化の表現系は腎予後ならず,生命予後も規定する因子であり,健康寿命達成のためにはCKDなどの加齢性疾患の管理のみならず,frailtyなどの全身状態の老化のマーカーの把握も重要である.

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© 2017 一般社団法人 日本内科学会
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