本邦では,大腸憩室の保有率が上昇し,大腸憩室出血が増加している.大腸憩室出血は70~90%で自然止血し,再出血率も20~40%と高率である.大腸憩室出血の診断には,止血術も可能な大腸内視鏡が推奨される.クリップ法では,出血点を直接把持する直達法に比べ,憩室口をふさぐ縫縮法での再出血率が高い傾向にある.出血憩室を機械的に結紮するバンド結紮法は,クリップ法に比して動脈塞栓術や外科手術への移行率が低いと報告されている.少数例ながら,遅発性腸管穿孔があり,留意する.再出血の予防には,NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)と一次予防アスピリン内服の中止を検討する.大腸憩室炎に穿孔・膿瘍を合併すると死亡率が高くなり,初療時に造影CT(computed tomography)によって合併症の有無を評価する.合併症のない大腸憩室炎は,抗菌薬投与が不要とするRCT(randomized controlled trial)があるものの,現時点では抗菌薬の投与は許容される.汎発性腹膜炎は緊急手術,瘻孔・狭窄合併憩室炎は待機的腸管切除術の適応となる.