日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
職業性呼吸器疾患の動向
色川 俊也
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2019 年 108 巻 10 号 p. 2186-2192

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抄録

環境中の物質が人体に侵入する主たる経路である呼吸器では,吸入された10 μm以下のエアロゾルは気管・気管支に沈着し,さまざまな呼吸器疾患を誘発する要因となり得る.職場環境での吸入曝露によって発症する職業性呼吸器疾患は,喘息や過敏性肺炎のように,初回曝露から発症までの期間が比較的短いもの,じん肺や中皮腫のように,曝露から発症まで数十年を要するものがある.いずれも,曝露防止により発症を防ぎ得る疾患ではあるが,近年は,新たな化学物質や工業材料の開発によって,これまでの曝露対策では対応困難な例も発生している.職業性呼吸器疾患の予防には,労働者の啓発・教育はもちろん,有害性の高い物質の使用回避(代替),適正な作業環境や作業態様の管理を行い,曝露対策を徹底することが重要である.また,労働者の健康管理を継続的に展開することも重要である.

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© 2019 一般社団法人 日本内科学会
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