日本内科学会雑誌
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108 巻, 10 号
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内科学会NEWS
目次
特集 自覚症状からみたリウマチ性疾患
Editorial
トピックス
  • 住谷 昌彦
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2070-2076
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    「痛み」は,“組織の実質的ないしは潜在的な傷害と関連した,あるいはこのような傷害と関連して述べられる不快な感覚的,情動体験”と国際疼痛学会により定義されており,身体器質的な原因を有する侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に加え,身体器質的な原因を有さない非身体器質的疼痛に分類される.ただし,このような分類は,今後の見直しが必要であることが国際的に共有されている.

  • 村上 正人, 金 外淑
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2077-2087
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    線維筋痛症は,臨床検査や画像検査で異常所見が認められないため,自覚症状から診断せざるを得ないリウマチ性疾患の代表的な疾患であり,慢性疼痛のモデル的疾患でもある.中高年の女性に多く発症し,全身の筋肉や腱等の結合組織の痛みを中心に多彩な心身の愁訴を有するために,十分な鑑別診断が必要であるが,近年注目され始めた「機能性身体症候群」の概念が線維筋痛症の病態を理解するうえで有用である.リウマチ性疾患のなかでの線維筋痛症の位置付けや機能性身体症候群との関わり,診断と治療について論ずる.

  • 西岡 健弥, 服部 信孝
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2088-2094
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    慢性疼痛及び全身痛を来たす神経内科疾患について述べる.慢性疼痛を来たす神経内科疾患は稀ではない.Parkinson病では約50%程度に,その他,帯状疱疹後の神経痛,糖尿病性末梢神経障害ならびに神経免疫疾患にも認められることがある.そのなかで,全身痛まで及ぶ疾患もあるが,バイオマーカーも少なく,その病態については不明な点が多い.本稿では,現在までに知られている全身痛を来たす神経内科疾患について,自験例も踏まえながら解説する.

  • 野田 健太郎
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2095-2102
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    関節痛や筋痛等の運動器疼痛は,整形外科疾患のみならず,膠原病においてもよくみられる症状である.膠原病においてみられる疼痛の多くが炎症に伴う疼痛,つまり,侵害受容性疼痛であるが,神経障害性疼痛,非器質性疼痛が混在することもあり,時に診断を困難にさせている.しかし,各々の疾患や病態における疼痛には,発症形式,罹患部位ならびに理学的所見等に特徴があるため,その特徴を想起しながら問診・診察すると,鑑別をつけやすい.

  • 紺野 慎一
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2103-2106
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    疼痛は,一般的に侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,そして,非器質性疼痛の3つの病態に分類され,慢性疼痛の大部分は,この三者の要素を有している.中脳辺縁系ドパミンシステムは無意識に機能しているが,何らかの原因で機能しなくなると,痛覚過敏の状態に陥る.ドパミンシステムが機能不全に陥る原因としては,ストレス,不安ならびにうつが挙げられる.うつ,不安ならびにストレス等が存在すると,ドパミンは痛み刺激に十分に反応せず,その結果,μオピオイドは産生されず,痛みの抑制機構が働かない.

  • 宮地 清光, 猪原 明子
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2107-2115
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    45~55歳の期間は更年期と呼ばれており,エストロゲン低下が女性特有の多彩な症状をもたらす.その症状に加え,朝のこわばり,手指の疼痛ならびに乾燥感があると,関節リウマチやSjögren症候群ではないかと心配し,内科医を訪れる患者が多い.関節の腫脹がなく,CRPの上昇がなければ,関節リウマチの可能性は少ないが,リウマチ反応がみられ,抗CCP抗体及び抗核抗体が陽性である場合は,適切な対応が必要である.閉経後であれば,ホルモン補充療法が有効であることが多い.

  • 柱本 照
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2116-2123
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    関節リウマチ患者にみられる関節外症状のなかでも,睡眠障害の頻度は高く,関節症状と睡眠障害,身体疲労,精神症状,日中の活動性は相互に影響し,患者の生活の質を低下させる.睡眠障害の原因としては,生体の概日リズムを調整するメラトニンやコルチゾール等のホルモン,炎症性サイトカイン等が重要で,適切な関節炎治療による睡眠障害の改善は,現代のリウマチ診療における喫緊の課題である.

  • 金子 祐子
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2124-2128
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    patient reported outcomeは,患者目線の主観的な意見を指標化した評価法である.客観的評価が重要視される時代を経て,近年,その重要性が見直されてきた.関節リウマチのように,痛みや倦怠感等,他人にはわかりづらい症状を主症状とする疾患では,患者自身の評価は非常に重要であるが,今後,医療の発展と共に,患者のより高い満足度と幸福を目指し,patient reported outcomeはますます重要になることが予想される.主観的評価を科学的に評価し,臨床試験及び日常臨床において有効に活用することが大切である.

MCQ
シリーズ:地域医療を実践する内科医とは
シリーズ:診療ガイドラインat a glance
今月の症例
  • 千葉 雅尋, 重松 明男, 山川 知宏, 高橋 正二郎, 高畑 むつみ, 小林 直樹, 太田 秀一
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2154-2160
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    65歳,男性.倦怠感で当院を受診した.血液検査にて汎血球減少,LD高値ならびにハプトグロビン低値であり,末梢血に破砕赤血球が認められた.血栓性血小板減少性紫斑病に特有の症状である腎機能障害,動揺する神経症状等はなかったが,血栓性血小板減少性紫斑病を想定して,血漿交換を開始した.後日vitamin B12低値が判明し,vitamin B12の補充を行い,溶血所見及び汎血球減少の改善が認められた.破砕赤血球を伴う巨赤芽球性貧血では血栓性血小板減少性紫斑病と類似した検査所見が認められることが報告されており,pseudo-TTPと呼ばれる.

  • 横江 徳仁, 米澤 利幸, 柴田 寛史, 小坂 顕司, 松原 彩子, 加藤 俊夫, 田中 博之, 伊藤 理, 久保 昭仁, 山口 悦郎
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2161-2167
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    30代,女性.発熱,全身の関節痛ならびに両下腿の発赤を主訴に受診.胸部CTで右上葉に空洞を伴う結節影と両側に多発結節影を認めた.症状出現の数週前に米国(テキサス州,カリフォルニア州)に旅行していたため,コクシジオイデス症を疑い,血液検査と気管支鏡検査(経気管支生検,気管支肺胞洗浄)を施行した.その結果,血清のコクシジオイデス抗体が陽性で,気管支肺胞洗浄液の培養でコクシジオイデスが陽性となり,肺コクシジオイデス症と診断した.

  • 遠藤 梓, 清水 貴之, 鄭 雅誠, 矢口 知征, 能戸 辰徳, 佐原 尚彦, 長島 義宜, 根本 尚彦, 安齋 均
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2168-2176
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    75歳,男性.就寝中に呼吸困難を自覚し,救急要請.低心機能による心不全の診断で,挿管管理のもとICUに入院し,アンジオテンシン変換酵素阻害薬の内服を開始した.しかし,喉頭浮腫のため,2回の再挿管の後,気管切開を施行した.その後も喉頭浮腫は改善しなかったため,気道狭窄の原因としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬を考え,薬剤の使用を中止したところ,喉頭浮腫の改善を認めた.アンジオテンシン変換酵素阻害薬使用時は血管性浮腫に留意すべきである.

医学と医療の最前線
  • 北村 忠弘
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2177-2185
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    糖尿病領域において,グルカゴンは常にインスリンの脇役であった.実際,インスリン研究に比べ,グルカゴン研究は大きく遅れている.その最大の理由は,グルカゴンの測定が正確にできなかったためである.グルカゴンは,プロセッシングの過程で類似するペプチドが複数産生され,測定の際に交差反応を起こす.最近,この問題を解決すべく,サンドイッチELISA法やLC-MS/MS法によるグルカゴン測定法が開発された.これらを用いた再検証で,従来とは異なるグルカゴンの本態が見えてきた.健常者でも食後はグルカゴン分泌が促進されること,グルカゴンは糖代謝調節よりもアミノ酸代謝調節に重要であること,糖尿病ではグルカゴンの過剰分泌及び糖負荷後の分泌抑制不全が認められること等である.さらに,グルカゴン抑制を主作用とする新しいクラスの糖尿病薬が開発中であり,今後の糖尿病診断及び治療方針決定において,グルカゴンは重要性を増している.

  • 色川 俊也
    2019 年 108 巻 10 号 p. 2186-2192
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    環境中の物質が人体に侵入する主たる経路である呼吸器では,吸入された10 μm以下のエアロゾルは気管・気管支に沈着し,さまざまな呼吸器疾患を誘発する要因となり得る.職場環境での吸入曝露によって発症する職業性呼吸器疾患は,喘息や過敏性肺炎のように,初回曝露から発症までの期間が比較的短いもの,じん肺や中皮腫のように,曝露から発症まで数十年を要するものがある.いずれも,曝露防止により発症を防ぎ得る疾患ではあるが,近年は,新たな化学物質や工業材料の開発によって,これまでの曝露対策では対応困難な例も発生している.職業性呼吸器疾患の予防には,労働者の啓発・教育はもちろん,有害性の高い物質の使用回避(代替),適正な作業環境や作業態様の管理を行い,曝露対策を徹底することが重要である.また,労働者の健康管理を継続的に展開することも重要である.

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