2020 年 109 巻 2 号 p. 207-214
これまでの大規模臨床試験や病態解明研究の結果から,左室駆出率が低下した心不全の病態形成には,神経体液性因子の慢性的な活性化が重要な役割を果たしていることが明らかになった.予後改善及び心筋リモデリング改善目的に,β遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme:ACE)阻害薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)を標準治療として用い,臓器うっ血とそれによる症状の軽減目的に利尿薬を用いる.一方,左室駆出率が保持された心不全に対する確立した治療法がなく,有効な薬物治療の開発が待たれる.