日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
過敏性腸症候群の原因としての腸管の微細炎症
石原 俊治三島 義之古谷 聡史福庭 暢彦川島 耕作木下 芳一
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2020 年 109 巻 2 号 p. 288-292

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抄録

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は,腹痛等の腹部症状に排便頻度や便性状の変化を伴う機能性消化管疾患の1つである.IBSの病態は,心理的ストレスと腸管知覚過敏が複雑に絡み合う“脳腸相関”に依存するところが大きい.しかし,最近では,急性胃腸炎後に発症するpost-infectious IBS(PI-IBS)に関する臨床的・基礎的研究が進み,PI-IBSの病態には,腸管粘膜の微細な慢性炎症や免疫異常が関連することが明らかとなった.粘膜の慢性炎症は,さまざまなメカニズムを介して内臓知覚過敏も誘発している.一方,PI-IBSの病態の形成と持続には,粘膜透過性の亢進が深く関わることも報告されている.IBSでは,機能と炎症のオーバーラップという新たな病態が注目されているが,未だ不明な点も多く,今後のさらなる解明が待たれる.

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