2021 年 110 巻 1 号 p. 124-132
間質性肺疾患のなかで最も難治性の特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)に対する抗線維化薬の承認によって,その疾患進行の抑制から,予後の改善も期待できるようになった.早期診断・早期治療の意義を踏まえ,実地医家,かかりつけ医との連携・協力によって,疑いを含めた早期の患者を評価できるシステムが重要となる.診断ガイドライン改訂等により,より侵襲の少ない方法で早期診断をしていく方向性が示され,胸部CT(computed tomography)検診で発見されるわずかな間質性の肺内異常影の評価にも注目が集まっている.一方,ステロイド等の抗炎症治療は,IPF慢性期ではむしろ有害であり,間質性肺疾患の診療においては,抗線維化薬と抗炎症薬の適応を見極めることがポイントとなるが,病態における“線維化”を軸とした治療体系の見直しも始まっている.そして,disease-modifying treatmentとしての薬物治療だけでなく,多職種による患者中心の系統的包括的なアプローチが必要である.