日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
進行肺癌に対する薬物療法の最前線
倉田 宝保
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2021 年 110 巻 11 号 p. 2441-2448

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抄録

肺癌は小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC)と非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)に分け治療される.以前は進行期にはいずれも殺細胞性の抗癌薬が治療の主体であったが,共に5年生存率はほぼ0%であった.分子標的薬剤と免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)の開発により,進行肺癌の治療成績は劇的な発展を遂げた.SCLCは抗癌薬とICIの併用で生存期間の延長が得られた.一方,NSCLCは分子標的薬剤の出現により標的となる遺伝子異常(ドライバー変異)を有する症例とそうでない症例に分類され,ドライバー変異を有する症例はそれに合致する分子標的薬剤の投与により予後が改善された.変異を有さない症例に対してはICIが治療の中心となり,腫瘍細胞におけるPD-L1(programmed death-ligand 1)の発現の程度により,ICIと抗癌薬との併用,ICIの併用が標準治療となり,進行非小細胞肺癌全体で5年生存率が20~30%にまで改善されている.

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